投資の基本

金投資を学ぶ

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日本の金市場

このグラフは過去10年の金相場の推移です。過去10年で右肩上がりで上昇しており、金の価格は1gあたり5,000円から13,000円近くまで伸びているのが分かります。

人類と金の歴史

古代から現代に至るまで、金は人類にとって常に魅力的な資源でした。その美しさ、希少性、そして化学的安定性により、金はさまざまな文明で貴重な資産として重宝されています。では、金はいかにして人類を魅了してきたのでしょう?

古代文明における金

エジプト文明
古代エジプトでは、金は神聖な金属とされ、ファラオや神々に関連付けられました。紀元前3000年頃から、エジプト人はヌビア地方で金を採掘し、装飾品や宗教儀式に使用しています。有名なツタンカーメン王の墓から発見された金製のマスクは、エジプトにおける金の重要性を物語っています。

メソポタミア文明
メソポタミアでも金は高く評価され、装飾品や宗教的なアーティファクトに利用されています。シュメール人やアッカド人は、金を王室や寺院の象徴として用いました。

インダス文明
インダス文明においては、金は交易の重要な品目でした。紀元前3000年頃、インダス川流域の都市であるハラッパーやモヘンジョダロで、金の装飾品や貨幣が発見されています。金は、インダス文明の広範な交易ネットワークの中で、他の地域との取引に使用されました。

古典時代と中世

ギリシャ・ローマ時代
古代ギリシャやローマでは、金は富と権力の象徴とされました。ギリシャの神々や英雄たちの像は金で飾られ、ローマ帝国では金貨が発行され、経済の基盤にも利用されます。ローマの金鉱山は、帝国の財源の重要な役割を果たしていました。

中世ヨーロッパ
中世ヨーロッパでも、金は主に教会や王室によって権力の象徴として収集されていました。十字軍の遠征や貿易を通じて金がヨーロッパ中に流通し、その価値を更に高める一方で、錬金術師たちは金を永遠の命をもたらす「賢者の石」に変える方法を探し求めました。

近代とゴールドラッシュ

アメリカ大陸の発見
15世紀末のアメリカ大陸の発見は、金に対する人々の欲望を一層掻き立てました。スペインの征服者たちは、アステカやインカ帝国の豊富な金を略奪し、本国に持ち帰ります。この金はヨーロッパ経済の発展に大きく寄与しました。

ゴールドラッシュ
19世紀に入ると、カリフォルニア(1848年)、オーストラリア(1851年)、そして南アフリカ(1886年)で相次いで金鉱が発見され、多くの人々が金を求めて移住するきっかけとなります。これらはゴールドラッシュと呼ばれ、近代都市の誕生と発展を促しました。

現代の金の役割

金本位制
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、多くの国が金本位制を採用しました。これは、通貨の価値を金の保有量に基づいて決定する制度であり、国際貿易と経済の安定に寄与します。日本も1897年(明治30年)に金本位制度を導入しました。しかし、1930年代の大恐慌や第二次世界大戦後の経済情勢の変化により、多くの国が金本位制を放棄し、現在の紙幣制度へ転換していきます。

現在の金市場
今日、金は依然として貴重な資産として扱われています。金は工業用途やジュエリーとして広く利用されるだけでなく、投資家はインフレや経済的不安定時に金を「安全資産」として購入します。デジタル技術の進展に伴い、金の電子取引市場も拡大しました。

金の埋蔵量

金は地球上で非常に希少な資源であり、その埋蔵量は限られています。

世界の金の埋蔵量

推定埋蔵量
現在、世界の金の総埋蔵量は約50,000トンと推定されています。これは4~5階立てのビルの容積に相当します。主要な埋蔵国は以下:

  • 南アフリカ: 約6,000トン
  • ロシア: 約5,300トン
  • オーストラリア: 約9,800トン
  • アメリカ: 約3,000トン
  • 中国: 約2,000トン

これらの国々は、世界の金埋蔵量の大部分を占めています。

採掘可能年数
現在の採掘速度を基にすると、既知の金埋蔵量は約20〜30年で枯渇する可能性があるとされています。ただし、新たな鉱床の発見や採掘技術の進歩により、実際の埋蔵量や採掘可能年数は変動する可能性があります。

日本の金の埋蔵量

国内の鉱山
日本にはいくつかの金鉱山がありますが、埋蔵量は比較的少ないとされています。有名な金鉱山としては、佐渡金山(新潟県)や菱刈鉱山(鹿児島県)が挙げられます。

深海資源
日本周辺の海底には、豊富な金の埋蔵が期待されています。特に深海熱水鉱床には、高濃度の金が含まれている可能性があります。深海資源の開発が進めば、日本の金埋蔵量も増加するかもしれません。

金のリサイクル

都市鉱山
金のリサイクルは、地上に存在する既存の製品や廃棄物から金を回収する「都市鉱山」として重要です。電子機器や装飾品などから回収される金は、金の供給源として大きな役割を果たしています。

リサイクルの割合
現在、毎年約1,300トンの金がリサイクルされており、これは新たに採掘される金の約30%に相当します。リサイクルの効率を上げることで、金の供給を補完し、埋蔵量の枯渇を遅らせることが求められています。

材料としての金の価値

金(ゴールド、Au)は、その優れた物理的および化学的特性により、例えば近代では半導体の材料としても重要な役割を果たしています。

優れた導電性

金は、電気を非常に効率的に伝導します。その導電性は銀に次いで高く、非常に低い抵抗を持つため、信号損失を最小限に抑えることができます。この特性は、高周波デバイスや高速通信デバイスに活用できます。

高い熱伝導性

金は、熱を効率的に伝導する能力も持っています。これは、例えばスマホなど電子デバイスが発生する熱を迅速に放散するために役立ちます。特に、高出力の半導体デバイスや高密度パッケージングでは、過熱を防ぐために効果的な熱管理が必要で、金の使用によりデバイスの熱特性が向上し、動作の安定性が確保されます。

高い耐腐食性

金は化学変化しづらいため、安定しており、錆びにくく、酸化や腐食に対して非常に大きな耐性があります。このため、金は様々な工業製品の製造プロセスで起こる過酷な環境下でも特性を維持することができます。

優れた接合特性

金は柔らかく、他の金属や半導体材料と容易に接合しやすい特性を持っています。よって金を用いたワイヤボンディング技術は広く活用されており、安定した電気接続を可能にします。また、金のボンディングワイヤは、その高い導電性と耐腐食性により、長期間にわたって高い品質も維持することも可能にします。

ナノテクノロジーへの応用

金ナノ粒子は、可視光との相互作用によって鮮やかな色を示すことから、芸術分野において何世紀にもわたって用いられています。近年では、その優れた固有の光エレクトロニクス特性についての研究が進み、有機太陽電池、センサープローブ、治療薬、生物医学用ドラッグデリバリー、導電材料、触媒をはじめとするハイテク分野でも利用されるようになりました。

まとめ

金は、その優れた導電性、高い熱伝導性、高い耐腐食性、優れた接合特性、およびナノテクノロジーへの応用可能性により、科学的にも非常に価値のある材料です。今後も金は、先端技術の発展において重要な役割を果たし続け、その需要と価値は上がり続けていくでしょう。

金投資のメリット

これまで金の市場価値が高い理由について学びましたが、では他の金融商品ではなく金に投資するメリットは何なのか?具体的に紹介します。

① 無価値にならない

実物資産である金は世界中に需要が存在し、無価値になるリスクが極めて低いです。戦争やテロ、感染症の流行などにより世界情勢が不安定になっている近年、より安定した資産である金の価値は高まり続けています。

一方、株式・債券などのペーパー資産は、企業の業績や各国の経済状況が悪化すると、価値が下がってしまい、最悪の場合には価値がゼロとなってしまう可能性もあります。資産防衛の選択肢として、金は最も合理的な投資先と言えるでしょう。

② 投資リスクを分散できる

投資リスクを減らす方法の一つとして、分散投資があります。

近年は株式、債券、投信など、価値変動の激しい金融商品が投資先として人気ですが、これらの金融商品は経済情勢や世の景気に影響を受けやすいというデメリットがあります。金融商品のみに集中して投資してしまうと、経済が不況に陥った際に連鎖的に大きな損害を被ってしまいます。実物資産である金にも投資することで、不況リスクを軽減できるでしょう。

分散投資の組み合わせをポートフォリオと呼びます。ポートフォリオに金を組み込むことで投資リスクを分散できます。一般的に、株価と金相場は逆相関するといわれています。

③ インフレ・デフレに強い

金はインフレだけでなく、デフレにも強い資産としても知られています。インフレとは物価の上昇を指しますが、言い換えるとこれは「貨幣の価値が下がる」ことを意味します。その点、金は実物資産なので、「モノ」としての価値がインフレ時に上がります。

「インフレ時に価格が上がるなら、デフレ時には価格が下がるのでは?」と思われるかもしれませんが、実は、金はデフレ時にも価格が上がる可能性があります。

実際に、リーマンショックのデフレ時にも金の価格は高騰しました。価格高騰の背景には、やはり「無価値にならない」という金の強みがあります。株式や債券と違って破綻することのない資産である金を入手しようと、金へ投資する人が増えた結果、需要が供給を上回り、デフレ時でも金価格は上昇しやすくなります。

④ 税制優遇がある

同じ実物資産の代表格である不動産とは違い、金は保有していても固定資産税がかからない強みがあります。また、金を売却して利益が出た際は、年間50万円分の控除を受けられます。利益が控除額内であれば、売却利益に対して課税されることはありません。

ただし、50万円を超える部分の利益については「譲渡所得」とみなされ、給与などほかの所得と合算されて「総合課税」の対象となりますのでご注意ください。

金投資のデメリット

メリットの多い金投資ですが、もちろんデメリットも存在します。メリットとデメリットとしっかりと理解し吟味した上で投資するか判断しましょう。

① 利息や配当がない

金投資は、所有しているだけでは利息や配当金が生まれません。株式投資なら投資先の業績に応じて配当が発生し、銀行預金でも利息を得られます。しかし金の場合、利益を得られるタイミングは売却時のみです。

② 紛失・盗難のリスクがある

現物資産である金は、盗難や紛失のリスクがあります。

もし金を自宅で保管するのであれば、厳重な金庫などに保管する必要があるでしょう。自宅での保管に不安がある場合は、銀行などの貸金庫を利用する方法もあります。いずれにしても、盗難や紛失のリスクに備えるための設備もしくは管理費用が必要です。

ただし、投資方法によってはこれらのリスクを排除することも可能です。金を直接保有せずに投資できる、投資信託や純金積立などの投資方法なら、紛失・盗難の心配はありません。

③ 取引時に手数料がかかる

金投資にはいくつかの方法がありますが、基本的に取引時は手数料の負担が必要です。

金地金で現物購入する場合は、500g以下の購入でバーチャージと呼ばれる手数料がかかり、投資信託や純金積立の場合も、購入時手数料や信託報酬、管理費などがかかります。これらの手数料は購入額の0.5~2.5%ほどであり、株式など金融商品の取引時に発生する手数料と比較すると割高です。

直近50年間、積立で購入していた場合で試算しても、手数料を考慮しても金は銀行預金より断然リターンの大きい資産運用だと言えます。しかしあくまで短期で大きく儲けるためではなく、長期的で安定的な資産形成の選択肢として考えるべきでしょう。

金に投資する方法

日本において取引可能な金の投資方法には、以下の5つがあります。

①金貨・金地金

②純金積立

③投資信託

④金ETF

⑤金先物・CFD

純金積立がおすすめ

5つある投資方法のうち、初心者の方におすすめなのは純金積立です。純金積立とは、月々の購入金額をあらかじめ決めておき、毎月一定額分の純金を自動的に購入する投資方法です。

純金積立には2つの利点があり、1つめのメリットは金の価格変動によるリスクを、「ドルコスト平均法」によって軽減できる点です。

ドルコスト平均法とは、投資商品の価格が下がったときに購入量を増やし、価格が上がったときに購入量を減らすという購入方法を指します。毎月一定額の投資金額を分配して購入することで、金相場に左右されることなく、買付単価を平準化できます。

純金積立の2つめのメリットは、少額から投資を始められる点です。

金に限らず、投資するうえで特に気になるのは、やはり投資にかかる費用ではないでしょうか。毎月1,000円程度からスタートできるケースもあり、生活に影響が出にくく、長期間積み立てることで、将来大きなリターンとして手もとに戻せる可能性があります。

なお、純金積立には「スポット購入」の方式もあり、ボーナスが出た月など自分の都合の良いタイミングで購入することも可能です。経済的に余裕のあるときは投資金額を増やすなど、より積極的な投資も行なえます。

純金積立は数年単位での保有が基本のため、長期的な安定資産の形成という目的にも最適だといえます。

1,000円から始められる純金積立投資↓

その他の投資方法

純金積立以外の投資方法として、「金貨・金地金投資」「投資信託」「金ETF投資」「金先物・CFD投資」の4つをそれぞれ紹介します。

  • 金貨・金地金

金貨・金地金投資とは、地金型金貨や金地金(インゴット)の現物を購入する投資方法です。

金貨や金地金は、宝飾店や貴金属店などで手軽に購入でき、数千円から投資を始められます。また、金貨への投資の場合、金自体の価値にコレクションアイテムとしての希少性も加わり、単に金を取引するよりもより高い金額で取引できる可能性があります。

ただし、金貨・金地金は現物資産のため、盗難や紛失リスクへのケアは慎重に行なわなければなりません。

  • 投資信託

投資信託とは、ファンドマネージャーという専門家が投資家から資金を集めて運用し、得られた利益が投資家へ還元される投資方法です。運用方針は運用会社の投資信託ごとにそれぞれ異なります。

金融商品の種類によっては、国の非課税制度である「NISA」を利用できる可能性もあります。NISAを利用すれば、売却時に得られた利益や、受け取った配当に対する税金がかからなくなり、より有利に投資を進められるでしょう。

  • 金ETF

ETFは上場している投資信託のことで、日経平均株価など特定の指数と連動する運用成果を目指しているのが特徴です。金ETFは、金の市場価格に連動することを目標に作られているETFで、株式同様に手軽に取引できます。

  • 金先物・CFD

金先物・CFD投資は、将来の購入・売却について、価格や数量をまえもって決めておき、取引を約束する投資方法です。

先物取引は決済期限があるのに対し、CFDは決済期限がないという点で、両者には大きな違いがあります。金先物・CFD投資は売り買い両方で利益を得られる可能性があり、リスクは発生しますがレバレッジ(手もとの資金以上の金額)を利かせた取引も可能です。

金にはどのくらい投資するのが妥当?

金投資は経済情勢に左右されない安定した資産形成ができるという大きなメリットがある一方、短期的には利益が見込めない、手数料が他の投資方法と比較して割高であるというデメリットも存在します。金投資のメリットデメリットをしっかり吟味し、余裕のある範囲内で投資を行なうのがおすすめです。

金へ投資するなら、ほかの投資方法と組み合わせましょう。例えば、景気の影響を受けにくい金と、好景気の際は大きな利益を期待できる株式投資を組み合わせるなど、互いのリスクを補い合えるポートフォリオを組むべきです。

複数の投資方法を組み合わせる場合に注意したいのが、投資先の割合のバランスです。一般的に、資産運用全体における金投資の割合は「10~15%程度」が理想とされています。この数値は、各国政府の金準備比率が、世界平均で12~13%であることを根拠としています。

また、金投資は安定性が高い一方で、大きな利益は見込めないという特徴があります。投資で大きな利益を得たいなら金投資の割合を少なめに、利益よりも安定性を優先したいなら金投資の割合を多めにするといった具合に、自身の投資方針に合わせて金融資産の割合を調節することが大切です。

個人的には資産運用の目的に合わせ、投資額の5~15%の範囲で純金積立をするのがおすすめです。

まとめ

金投資は、リスク分散とインフレヘッジのために有効です。投資額や資産形成の目的に応じて適切な配分を設定することで、長期的に安定した資産形成を実現します。運用資産の配分を見直しながら、計画的に投資を進めていきましょう。

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